毛筆あっての硬筆
現在では、硬筆だけを教える教室もあるようですが、昔からあってなくなることのないお習字(毛筆)と硬筆の違いはどこにあるのでしょうか。
埼玉県には大人も子供も馴じみの深い硬筆展があります。県展に選ばれる作品などを見ると、教える立場の私から見ても、『よくぞここまで、鉛筆やペンでハネやハライの強弱をつけたものだなぁ』とため息が出るほど感心させられます。
書道では一画を書く中にも、起筆・送筆・収筆といった流れがあるのですが、そこには様々な技術要素で画が構成されます。運筆の速度、角度、そして深度(強弱のようなもの)。結論から言うと、県展で選ばれるような子供たちは、ほぼ100%毛筆を習っていて、あの繊細な表現が出来ているとしか考えられません。
“別に県展に選ばれるほど上手じゃなくても、ある程度のきれいな字が書けるようになれば・・・”と思っている方も多いかと思いますが、やはり整った字は、字を構成するトメやハネ、ハライ、転折などの一つ一つが出来ていないと書けないのです。それを習うには、繊細な動きを表現出来る筆を使い、大きな字で意識・集中しながら書くことが必要になるわけです。硬筆がある程度上手に書けても、毛筆が上手になるとは限りません。しかし毛筆が上手に書ければ、必ず硬筆の腕も付いてきます。毛筆を身に付けるには時間がかかります。けれども実際のところ、美しい字の習得には、実は早道なのではないかと私は考えます。
上の写真は、永字八法といい、【永】の字の中に書に必要な八つの技法が全て含まれていることを表しています。※本来はそれぞれの技法を側(ソク)、勒(ロク)、努(ド)、趯(テキ)、策(サク)、掠(リャク)、啄(タク)、磔(タク)と言います。
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